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アドネイス Adonais


アドネイス:パーシー・シェリー

  わたしは涙する 死んだアドネイスのために
  おお 涙せよ! たとえ我らの涙が
  アドネイスを凍らせた霜を溶かせなくても
  そして汝 失われたものを嘆くために
  季節の中から選び出された悲しみの時よ!
  ほかの時を呼び起こして 汝の悲しみを告げよ
  “わたしとともにアドネイスは死んだ
  未来の時が過去を忘れ去るその時まで
  アドネイスの名は永遠にこだまするだろう“と

  あなたはどこへいたのか 大いなる母よ
  あなたの息子が 暗黒の槍に刺されて倒れたときに
  また孤高のウラニアよ あなたはどこにいたのか
  アドネイスが死んだときに
  大いなる母は天国にあってこだまの響きを聞いた
  またウラニアは柔らかな息を吹きかけて
  消えいろうとするメロディをよみがえらせた
  死とは程遠い花々のように そのメロディで
  アドネイスを飾り 死の重荷を遠ざけて欲しい

  涙せよ 死んだアドネイスのために!
  目覚めよ 悲しみの母よ 目覚めよ そして涙せよ!
  いやそれも詮無きこと 火のように燃える涙を鎮め
  悲しみに高鳴る心を アドネイスの心のように
  ものいわぬ あきらめの眠りにつかしめよ
  アドネイスは死んだのだ 賢者たちが行く世界に行ったのだ
  かの冥府の神がアドネイスを生き返らせ
  この世に戻してくれるとは考えるな
  死はアドネイスの声を閉ざし 我らの悲しみを嘲笑する


1821年2月、ジョン・キーツがローマで客死したことを知ったシェリーは大いに嘆き、その年の春、キーツの死を悼む長大な挽歌を書いた。「アドネイス」である。「解き放たれたプロメテウス」と並んでシェリーの最高傑作に数えられる。イギリス文学史上もっとも優れた挽歌とされる作品でもある。

全編は壮大な構想に貫かれ、人間としての詩人の死と、芸術の精神としての詩人の再生が、深い悲しみと力強い信念を以て語られている。

全編は55節、495行からなる長大なものであるが、ここでは、その最初の3節を紹介したい。


アドネイスはオリエントの神アドニスのことで、死と再生を繰り返すとされた。ギリシャ文化にも影響し、日々生き返るその姿が、レスボス島のサフォーに信仰された。シェリーはキーツをアドニスに重ねることで、その芸術が永遠であることを歌ったのである。








Adonais - An Elegy on the Death of John Keats by Percy Shelley

  I weep for Adonais--he is dead!
  Oh, weep for Adonais! though our tears
  Thaw not the frost which binds so dear a head!
  And thou, sad Hour, selected from all years
  To mourn our loss, rouse thy obscure compeers,
  And teach them thine own sorrow, say: "With me
  Died Adonais; till the Future dares
  Forget the Past, his fate and fame shall be
  An echo and a light unto eternity!"

  Where wert thou, mighty Mother, when he lay,
  When thy Son lay, pierc'd by the shaft which flies
  In darkness? where was lorn Urania
  When Adonais died? With veiled eyes,
  'Mid listening Echoes, in her Paradise
  She sate, while one, with soft enamour'd breath,
  Rekindled all the fading melodies,
  With which, like flowers that mock the corse beneath,
  He had adorn'd and hid the coming bulk of Death.

  Oh, weep for Adonais--he is dead!
  Wake, melancholy Mother, wake and weep!
  Yet wherefore? Quench within their burning bed
  Thy fiery tears, and let thy loud heart keep
  Like his, a mute and uncomplaining sleep;
  For he is gone, where all things wise and fair
  Descend--oh, dream not that the amorous Deep
  Will yet restore him to the vital air;
  Death feeds on his mute voice, and laughs at our despair.





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