English Poetry and Literature
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エンディミオン Endymion :ジョン・キーツ


  美しいものは永遠の喜びだ
  それは日ごとに美しさを増し
  決して色あせることがない
  わたしたちに安らぎをもたらし
  夢多く健康で静かな眠りを与えてくれる

  それ故毎朝わたしたちは花輪を編み
  自分たちを大地に結び付けるのだ
  落胆していようとも 暗澹とした日々に
  生きるのがままならないとも
  なにもかもが意に反して
  むしゃくしゃしていようとも

  わたしたちの心の暗闇から不吉なものを
  追い払ってくれる美しさがある 
  太陽や月の美しさがそうだ
  また若葉を芽吹いて繁みとなる木々
  緑に包まれてのびのびと咲く水仙たち
  灼熱の季節にも自分のために
  涼しさを生み出す小川の流れ
  麝香バラの咲き乱れる森の繁み

  またわたしたちが偉大な死者について
  思い描く運命の壮大さや
  聞いたり読んだりした美しい物語の数々
  天空の一端からわたしたちに降り注ぐ
  不死の飲み物の尽きせぬ泉に そんな美しさを感ずるのだ


エンディミオン Endymion はギリシャ神話に現れるうら若き牧童である。余りにも美しいので、月の女神セレネに愛された。セレネはエンディミオンが人間として寿命があることを悲しみ、ゼウスに永遠の生を与えてくれるように願った。ゼウスはその願いをかなえてやったが、それは永遠の眠りにつく姿としてであった。

ジョン・キーツはこのエンディミオンを詩のテーマに取り上げるに際して、神話の物語そのまま採用するのではなく、エンディミオンが地下、海底、天空を放浪し、その果てにセレネと結ばれるというように、作り変えた。

詩は1817年(22歳のとき)に書かれ、翌年出版された。キーツが詩人として自立するに際しての記念すべき作品といえる。ところが批評界の反響は悪意に満ちたものであった。Quaterly という雑誌は、キーツの人格を傷つけるような記事までとり混ぜて、この作品を酷評したため、キーツは深く傷ついたといわれる。

全体は4000行をこえる長大なものである。ここでは冒頭の部分を紹介したい。キーツの美意識が現れている有名な部分である。








Endymion - John Keats

  A thing of beauty is a joy for ever:
  Its loveliness increases; it will never
  Pass into nothingness; but still will keep
  A bower quiet for us, and a sleep
  Full of sweet dreams, and health, and quiet breathing.

  Therefore, on every morrow, are we wreathing
  A flowery band to bind us to the earth,
  Spite of despondence, of the inhuman dearth
  Of noble natures, of the gloomy days,
  Of all the unhealthy and o'er-darkened ways
  Made for our searching: yes, in spite of all,

  Some shape of beauty moves away the pall
  From our dark spirits. Such the sun, the moon,
  Trees old and young, sprouting a shady boon
  For simple sheep; and such are daffodils
  With the green world they live in; and clear rills
  That for themselves a cooling covert make
'  Gainst the hot season; the mid forest brake,
  Rich with a sprinkling of fair musk-rose blooms:

  And such too is the grandeur of the dooms
  We have imagined for the mighty dead;
  All lovely tales that we have heard or read:
  An endless fountain of immortal drink,
  Pouring unto us from the heaven's brink.





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