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死者の埋葬1:エリオット「荒地」 |
T.S.エリオットの詩「荒地」から、「死者の埋葬」1。(壺齋散人訳) 四月は一番残酷な月だ 不毛の土地からリラが芽生え 記憶が欲望とごっちゃになり 根っこが春雨を吸ってモゾモゾする 冬はあたたかく包んでくれた 気ままな雪が大地を覆い 球根には小さな命がやどっていた 夏にはみんなびっくりした シュタルンベルガー湖の向うから雨と一緒にやってきたので 我々は柱廊で雨宿りし 日が出てからホーフガルテンに入り コーヒーを飲んで一時間ばかり話した ワタシハロシア人ナンカジャアリマセン リトアニア生マレノレッキトシタドイツ人デス まだ子供だったころ 従兄の大公の邸で過ごしたわ あの人 橇に乗せてくれたけど わたしは怖かったの するとあの人は マリア マリア マリア しっかりつかまってて そういいながら 下っていったっけ 山の中では 気持ちがいいものよ わたしは夜通し本を読み 冬には南の方に行くの 四月への言及から始めたのはチョーサーの「カンタベリー物語」を意識したのだと解釈されている。「カンタベリー物語」の書きだしでは、4月は恵みの季節として書かれているが、エリオットは逆に、もっとも残酷な季節としている。 フレイザーの「金枝篇」によれば、植物神アドーニスの死と再生の儀式は、春に行われた。ということは、この詩の大きなテーマの一つが植物神の死と再生にあることを、冒頭で暗示しているということだ。 シュタルンベルガー城は、ミュンヘンの南西にある湖。バイエルン王ルードヴィッヒ二世がここで入水自殺した。ホーフガルテンはミュンヘン市内にある宮廷庭園。 突然人称が変り、「我々」が出てくるが、これは、エリオットとマリ・ラリッシュいう女性との実際にあった対話の再現だということだ。マリーはバイエルン王国の王族につながる女性で、従兄のルドルフはバイエルン大公だった。そのバイエルン大公との思い出を、マリーが突然話し出すが、このような語り手の突然のスイッチは、以後様々なところであらわれる。 |
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I. THE BURIAL OF THE DEAD APRIL is the cruellest month, breeding Lilacs out of the dead land, mixing Memory and desire, stirring Dull roots with spring rain. Winter kept us warm, covering Earth in forgetful snow, feeding A little life with dried tubers. Summer surprised us, coming over the Starnbergersee With a shower of rain; we stopped in the colonnade, And went on in sunlight, into the Hofgarten, And drank coffee, and talked for an hour. Bin gar keine Russin, stamm' aus Litauen, echt deutsch. And when we were children, staying at the archduke's, My cousin's, he took me out on a sled, And I was frightened. He said, Marie, Marie, hold on tight. And down we went. In the mountains, there you feel free. I read, much of the night, and go south in the winter. |
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作者:壺齋散人(引地博信) All Rights Reserved (C) 2007-2014 このサイトは、作者のブログ「壺齋閑話」の一部を編集したものである |