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雷がいったこと1:T.S.エリオット「荒地」



T.S.エリオットの詩「荒地」から「雷がいったこと」1(壺齋散人訳)

  汗だらけの顔を赤く照らす松明の後で
  庭園を満たす冷たい沈黙の後で
  岩地での苦悩の後で
  叫び声と泣き声が聞こえ
  牢獄と宮殿 そして春雷の残響が
  遥か山々を超えてこだまする
  生きていた者は今は死に
  生きていた俺たちは今や死につつある
  わずかな忍耐を伴いながら


原注では、第五部のこの冒頭部分では三つのテーマが扱われている、といっている。エマオへの旅、危険堂への接近、東ヨーロッパの現在の衰退、この三つである。

エマオへの旅とは、ルカ福音書のキリスト復活を巡る物語。エルサレムからエマオに向かう二人の旅人に、復活したキリストが道連れとして加わるというものだ。二人が道連れをキリストであると気付いた瞬間にキリストの姿は消える。

危険堂については聖杯伝説についてのウェストン女史の本を参照とあるから、聖杯を求めての旅の途中の出来事だろうと思われる。東ヨーロッパは岩山のイメージで溢れている。

この部分は雷が語るということになっている。






V. WHAT THE THUNDER SAID

  After the torch-light red on sweaty faces
  After the frosty silence in the gardens
  After the agony in stony places
  The shouting and the crying
  Prison and palace and reverberation
  Of thunder of spring over distant mountains
  He who was living is now dead
  We who were living are now dying
  With a little patience





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