English Poetry and Literature
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シェイクスピアのソネット38


  わたしのミューズが創造の種に欠くことなどあろうか?
  君の息吹がわたしの詩のなかに注ぎ込み
  素敵な詩句をもたらしてくれるというのに
  それらは通俗的な作品などにはもったいないもの

  もしわたしの詩の中に読むに堪えるものがあるなら
  どうか君自身に感謝してくれたまえ
  君自身がその誕生に光を与えたのだから
  どんな愚か者でも君に謝辞を書かずにはいられない

  十人目のミューズになって 月並みな詩人があがめる
  九人のミューズより十倍ものご利益を授けてくれたまえ
  君を頼るものに 後の世に長く残るような
  不朽の名作を生み出させてくれたまえ
    わたしのかよわいミューズが世間を楽しませるとしたら
    生みの苦労はわたしが背負い 君には称賛が相応しい


青年を10番目のミューズにたとえ、シェイクスピアの詩がそこからどんなインスピレーションを得ているかを歌ったこの詩は、同様のテーマを歌ったほかの数編の詩とともに、恋人に対するシェイクスピアのイメージが良く現れているものだ。

まず、既成のミューズのほかに、新しい10人目のミューズを持ち出していることは、シェイクスピアの愛に対する見方が、普通のものではないということを主張している。

アフロディテに象徴される永遠の美女とは、愛に狂ったものが自身を犠牲にして追い求めながら、それ自身は石のように鈍感なものとして表象されていたのだが、シェイクスピアはそれを、自分にインスピレーションを与えてくれる親しい相手と言い換えている。








SONNET 38 ?William Shakespeare

  How can my Muse want subject to invent,
  While thou dost breathe, that pour'st into my verse
  Thine own sweet argument, too excellent
  For every vulgar paper to rehearse?

  O, give thyself the thanks, if aught in me
  Worthy perusal stand against thy sight;
  For who's so dumb that cannot write to thee,
  When thou thyself dost give invention light?

  Be thou the tenth Muse, ten times more in worth
  Than those old nine which rhymers invocate;
  And he that calls on thee, let him bring forth
  Eternal numbers to outlive long date.
    If my slight Muse do please these curious days,
    The pain be mine, but thine shall be the praise.

my Muse:自分の詩的なインスピレーションをさす、want:lack、vulgar paper:月並みな作品、aught:anything、Worthy perusal;読むに価する、stand against thy sight:君が見るに十分耐える、to outlive long date:永遠に生き残るように、





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