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雷が言ったこと6:T.S.エリオット「荒地」



T.S.エリオットの詩「荒地」から「雷が言ったこと」6(壺齋散人訳)

           俺は岸辺に座って
  釣をしていた 干からびた平原を背にして
  せめて自分の土地くらいは手入れしようか?

  ロンドン橋が落ちまする 落ちまする 落ちまする

  ソシテ彼ハ浄火ノ中へ身ヲカクシタ
  イツ私ハ燕ノヨウニナレルダロウカ~おお燕 燕よ
  崩レタ塔ニイルアキテーヌ公ヨ
  これらの断片で俺はこの廃墟を支えてきたのだ
  お前のいうとおりにしよう ヒエロニモがまた狂った
  ダッタ ダヴァドヴァム ダミャータ

     シャンティ シャンティ シャンティ


詩の最後の部分の語り手は、この詩を語り始めた当の人物だと思われる。彼は、聖杯探求の旅の証人となりながら各地を経巡った挙句、ロンドンに帰ってきたのだろう。いまや彼はテムズの岸辺に座って、背後には荒地としてのロンドンを控え、目の前には落ちんとするロンドン橋を見つめている。(「ロンドン橋が落ちまする」の一行は有名なナーサリー・ライムのリフレイン)

「ソシテ彼ハ」の一行はダンテの煉獄篇からの引用。「イツ私ハ燕ノヨウニナレルダロウカ」はピロメラ姫のイメージと関連あり。「崩レタ塔ニイルアキテーヌ公ヨ」は、ジェラール・ド・ネルヴァルのソネットからの引用。シャンティは「ウパニシャッド」の結語、「知的理解を超えた平安」という意味だと原注にある。






           I sat upon the shore
  Fishing, with the arid plain behind me
  Shall I at least set my lands in order?

  London Bridge is falling down falling down falling down

  Poi s'ascose nel foco che gli affina
  Quando fiam ceu chelidon--O swallow swallow
  Le Prince d'Aquitaine à la tour abolie
  These fragments I have shored against my ruins
  Why then I'll fit you. Hieronymo's mad againe.
  Datta. Dayadhvam. Damyata.

       Shantih shantih shantih





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