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二十日鼠へ To a Mouse :バーンズ


ロバート・バーンズ Robert Burns の詩「二十日鼠へ」To a Mouse を読む。(壺齋散人訳)

  ちっぽけで すばしこく 臆病な生き物よ
  さぞ驚いたことだろう
  だがどんなに急いでも
  すばやく逃げようとも無駄だ
  私はすぐお前に追いつき
  鋤の一撃をお見舞いできる

  こんなことをいって お前たちを驚かす
  人間の高慢を許してくれ
  人間は自分の都合で
  お前たちを仰天させ
  哀れなお前の仲間たちを
  ひどい目にあわせるのだ

  時に盗みを働くが せいぜい高が知れたもの
  お前たちも生きねばならぬ
  ところがその仕返しに
  お前たちは耳を裂かれる
  私は歓喜の声をあげ
  後悔することもないのだ

  お前のねぐらもめちゃくちゃだ
  風に吹かれて壁がきしむ
  新たにねぐらを作ろうにも
  草一つ残されてない
  冬の寒気が迫ってくる
  辛くて厳しい冬の風が

  草原を枯らしつくし
  冷たい冬の風がやってくる
  お前は風を避ける場所を求め
  そこで冬を過ごそうとしていた
  だが無慈悲な鋤の一撃が
  お前のねぐらをめちゃくちゃにしたのだ

  わずかの草と切り株が
  一冬の糧となるはずだった
  それなのに何たることか
  今や家なしの裸ねずみ
  冷たい霙や 降る霜を
  ひとり凌いでいかねばならぬ

  だがねずみよ 不確かな未来は
  お前にとってだけではない
  人間とねずみの立場が
  いつ逆転しないとも限らない
  人間もまた喜びを砕かれ
  悲嘆と苦痛にさいなまれよう

  お前が私より幸せなのは
  現在だけを生きればよいから
  私ときては過去に縛られ
  後悔に心痛めながら
  まだ来ぬ未来に向かっては
  不安と恐れを抱かねばならぬ

「二十日鼠へ」と題するこの詩は、フォークソングではないが、バーンズは伝統的なスコットランド方言で書いている。そのため、イングランドはもとより、スコットランド人でさえ、辞書の助けを借りないでは読めない人が多いという。
(筆者もまた、訳出にあたっては、注釈書の世話になった)

バーンズが、同時代人のブレイクに比較して、今日とかくマイナーに見られるのは、この言葉の壁のためであるが、そこがまた、バーンズらしいところともいえる。

この詩は、人間によって巣をひっくり返された小さな生き物の驚きと嘆きを歌ったものだ。人間は、ねずみに比べれば大きな存在かもしれないが、もっと大きなものの目にとっては、ねずみと異なるところはない。バーンズはこういうことで、あらゆる生き物の命の尊さを訴えているのかもしれない。

アメリカの作家、ジョン・スタインベック John Steinbeck は、自分の小説の題名「二十日鼠と人間」 Mice and Men をこの詩の中の言葉からとった。小説の中では、知恵遅れの主人公が小さな動物を可愛がるのであるが、あまりに力強く抱く余りに動物たちを殺してしまう。そのさまが、この詩のイメージに似ているからだった。








To a Mouse -Robert Burns

  Wee, sleekit, cowrin', tim'rous beastie,
  O, what a panic's in thy breastie!
  Thou need na start awa sae hasty,
  Wi' bickering brattle!
  I wad be laith to rin an' chase thee,
  Wi' murd'ring pattle!

  I'm truly sorry man's dominion,
  Has broken Nature's social union,
  An' justifies that ill opinion,
  Which makes thee startle
  At me, thy poor, earth-born companion,
  An' fellow-mortal!

  I doubt na, whiles, but thou may thieve;
  What then? poor beastie, thou maun live!
  A daimen icker in a thrave
'  S a sma' request;
  I'll get blessin wi' the lave,
  An' never miss't!

  Thy wee bit housie, too, in ruin!
  It's silly wa's the win's are strewin!
  An' naething, now, to big a new ane,
  O' foggage green!
  An' bleak December's winds ensuin,
  Baith snell an' keen!

  Thou saw the fields laid bare an' waste,
  An' weary winter comin fast,
  An' cozie here, beneath the blast,
  Thou thought to dwell ---
  Till crash ! the cruel coulter past
  Out thro' thy cell.

  That wee bit heap o' leaves an' stibble,
  Has cost thee monie a weary nibble!
  Now thou's turn'd out, for a' thy trouble,
  But house or hald,
  To thole the winter's sleety dribble,
  An' cranreuch cauld !

  But Mousie, thou art no thy lane,
  In proving foresight may be vain;
  The best-laid schemes o' mice an' men
  Gang aft agley,
  An' lea'e us nought but grief an' pain,
  For promis'd joy !

  Still thou art blest, compar'd wi' me!
  The present only toucheth thee:
  But och! I backward cast my e'e,
  On prospects drear!
  An' forward, tho' I canna see,
  I guess an' fear!





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