English Poetry and Literature
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シェイクスピアのソネット98 From you


  春の間私は君と離れて過ごした
  誇らしげな四月は色鮮やかな装いのうちに
  萬物に青春の息吹を吹き込み
  陰気なサターンでさえ笑いかつ踊ったほどだ

  だが鳥たちの歌声を聞いても 
  色も香もとりどりな花の匂いをかいでも
  私はさわやかな話をする気になれなかったし
  ほころびた花を摘み取る気になれなかった

  白い百合の花を見ても心動かず
  深紅のバラを見ても素敵だと思わなかった
  それらはただ甘いだけ その姿は君を真似しているだけだ
  君はあらゆるもののお手本なのだから
    私にはまだ冬のままに思える だから君がいないなら
    これらを君の影だと思って戯れ遊ぼう


青年のいない春が、どんなに味気ないか、鳥が笑い、花々が匂い咲き、サターンでさえ浮かれて踊りだしても、自分にはそれを享受することができぬ、それは愛するものが近くにいないからなのだと、詩人は歌う。

春のイメージは拡散して、第七句目では夏が姿を覗かせるまでになるが、詩人は相変わらず冬のままだと嘆く。そしてせめてそれらが、愛するものの影だと思って自分を慰めようとするのだ。

シェイクスピアのソネットの中でも、もっとも素直に読めるもののひとつだろう。








SONNET 98 ーWilliam Shakespeare

  From you have I been absent in the spring,
  When proud-pied April dress'd in all his trim
  Hath put a spirit of youth in every thing,
  That heavy Saturn laugh'd and leap'd with him.

  Yet nor the lays of birds nor the sweet smell
  Of different flowers in odour and in hue
  Could make me any summer's story tell,
  Or from their proud lap pluck them where they grew;

  Nor did I wonder at the lily's white,
  Nor praise the deep vermilion in the rose;
  They were but sweet, but figures of delight,
  Drawn after you, you pattern of all those.
  Yet seem'd it winter still, and, you away,
  As with your shadow I with these did play:

with him:him は春のこと。シェイクスピアはよく季節を擬人化する、





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