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シェイクスピアのソネット20 A woman's face |
私の情熱の主人にして女主人でもある君よ 自然が描き出した女性の顔を君は持っている 君はまた女性のような優しい心も持っている それは普通の女のように浮気なものではない 目の輝きは女性よりも明るく 見つめるものに流し目をするようなことはない 姿は男だが女としても申し分ない 男の目を盗み 女の魂を揺さぶるのだ 君は始めは女として作られたはずなのに 自然が君を作っているうちに恋に陥り 余計なものをつけて君をわたしから取り上げてしまった 私にとっては何の用もない一物を 君は女を喜ばすために選ばれたのだから 女を喜ばしてもよい だが私には本当の愛をおくれ 18番目のソネットで始められた、青年に対する愛の告白が、20番目のこのソネットで公然化する。だがその愛は、男色のような肉の愛ではないと、詩人はいっているように受け取れる。というのも、青年は本来女として作られたのを途中で男に変えられたのだから、彼の肉体の美は女たちのためにとっておいてもよいといっているからである。詩人はそのかわりに、精神的な愛を、若者に求めている。 シェイクスピア一流の遊びが、この詩の中でも見られる。ひとつは20というナンバーだ。これは人間の手足にある指の数だから、人間のシンボルを表わしている。シェイクスピアが、それに対応するところにこの詩を置いたのには、それ相応の意気込みがあったのではないか。 もうひとつは、7節目にある hues という言葉に込められたものだ。これはhewsに通じる。つまりheはherbert , ws はwilliam shakespeare を表わしていると読み取れる。 そうだとすればこの詩には、二人の間柄が言葉遊びの中でも展開されていることになる。この4つの文字は、詩の全体の中に、満遍なくちりばめられている。 |
SONNET 20 William Shakespeare A woman's face with Nature's own hand painted Hast thou, the master-mistress of my passion; A woman's gentle heart, but not acquainted With shifting change, as is false women's fashion; An eye more bright than theirs, less false in rolling, Gilding the object whereupon it gazeth; A man in hue, all 'hues' in his controlling, Much steals men's eyes and women's souls amazeth. And for a woman wert thou first created; Till Nature, as she wrought thee, fell a-doting, And by addition me of thee defeated, By adding one thing to my purpose nothing. But since she prick'd thee out for women's pleasure, Mine be thy love and thy love's use their treasure. 1−2節の部分は、Thou hast a woman’s face、4節は、as women’s fashion is false、hue:顔色、all 'hues':男女双方の顔かたち、by addition me of thee defeated:付け加えることで、君を私から奪う、she prick'd thee out:自然が君を摘み取る、Mine be thy love:君の愛は私のものになれ |
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