English Poetry and Literature
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シェイクスピアのソネット9 Is it for fear


  君が結婚もせずに人生を浪費するのは
  死んで未亡人を悲しませないためかい?
  ああ!もし君が子どもを残さずに死のうものなら
  世間が未亡人のように悲しむだろうよ

  世間が君の未亡人となって 君が君の似姿を
  残してくれなかったことを嘆き悲しむだろうよ
  普通の未亡人なら 残された子どもの目に
  夫の面影をみて慰められるのに

  浪費家が湯水のように金を使っても
  金は居場所をかえるだけ 外の連中が使う
  だが美は浪費すればこの世からなくなってしまう
  使わずにとっておいても いずれ消えてしまうのだ
    他人を愛する気持ちを持たないものは
    自分に対しても恥ずかしい殺人の罪を犯すのだ


詩人は青年がなかなか勧めに従わないのに業を煮やして、強い口調を用いる。結婚しないのは、妻を未亡人にすることを恐れているからだとしたら、それは思い違いだ。もし君が子を残さずに死んだら、世間全体が未亡人のように悲しむのだから。それというのも、君の美しい似姿をみて、慰められることもないからだ。

さらに詩人はいう。子どもも作らずに自分自身の美しさを浪費することは、世間に対する罪作りにとどまらず、自分自身に対しても殺人の罪を犯すことになるのだと。








SONNET 9 ?William Shakespeare

  Is it for fear to wet a widow's eye
  That thou consumest thyself in single life?
  Ah! if thou issueless shalt hap to die.
  The world will wail thee, like a makeless wife;
  The world will be thy widow and still weep
  That thou no form of thee hast left behind,
  When every private widow well may keep
  By children's eyes her husband's shape in mind.
  Look, what an unthrift in the world doth spend
  Shifts but his place, for still the world enjoys it;
  But beauty's waste hath in the world an end,
  And kept unused, the user so destroys it.
    No love toward others in that bosom sits
    That on himself such murderous shame commits.

to wet a widow's eye:未亡人の目に涙を催させる、嘆き悲しませる、issueless:子どもを作らないこと、shalt hap to die:死ぬようなことがあれば、makeless wife:未亡人、no form of thee hast left behind:似姿を残さずに死ぬ、Look, what:なんであれ、whatever、





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