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聖母への讃歌 Hymn:エドガー・ポーを読む



エドガー・ポーの詩「讃歌」Hymn(壺齋散人訳)

  朝にも 真昼にも そして黄昏時にも
  マリア様 わたしの讃歌をお聞きください
  喜びのときも 苦悩のときも
  聖母様 わたしをお導きください

  わたしの寿命は尽きかけて
  空には一片の雲もない
  わたしの魂が迷わぬよう
  あなたのもとへと導いてください

  運命の嵐が吹き荒れて
  現在と過去を暗く染めようとも
  わたしの未来はあなたとともに
  明るく輝くようお導きください


エドガー・アラン・ポーに宗教的な信仰心があったかは、甚だ疑わしい。だが彼はカトリックのための讃歌を書いている。もっともそれは1835年に書かれた短編小説「モレラ」の中で、登場人物が歌うという設定のものだった。

1845年には独立した詩として発表している。その当時妻のヴァージニアは病状が悪化し、ポーはその死の近いことを予感していたに違いないから、妻の魂の救済のためにあらためて取り上げた可能性もある。

この詩を書いた1835年という年は、ポーがヴァージニアと結婚した年だ。ポーは養父と対立して1831年その家を追い出されてから、ボルチモアに住んでいた伯母を頼って転がり込んだ。ヴァージニアは伯母の一人娘でポーにとっては従妹に当たる娘だったが、生来病弱でしかも知的発達も遅れていたらしい。

そんな娘の幸福を考えて、母親は甥のポーに娘を押し付けたのだともいわれている。ポーがヴァージニアと結婚したとき、ポーは26歳、ヴァージニアはまだ13歳だった。





HYMN. By Edgar Allan Poe

  AT morn -- at noon -- at twilight dim --
  Maria! thou hast heard my hymn!
  In joy and wo -- in good and ill --
  Mother of God, be with me still!

  When the Hours flew brightly by,
  And not a cloud obscured the sky,
  My soul, lest it should truant be,
  Thy grace did guide to thine and thee ;

  Now, when storms of Fate o'ercast
  Darkly my Present and my Past,
  Let my Future radiant shine
  With sweet hopes of thee and thine!





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