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命の家 The House of Life:ロゼッティの翻訳



ダンテ・ガブリエル・ロゼッティ Dante Gabriel Rossetti はラファエル前派を代表する画家として知られる。古典絵画と異なり、遠近法を無視した様式的な画風は、近代絵画に大きな影響を与えた。

その著しい特徴のひとつとしてエロティシズムの充溢があげられる。彼はそのエロティシズムの源泉を、有名なモデルであり、自身絵や詩も作った才女エリザベス・シドール Elizabeth Siddal から汲み取った。

ロゼッティのエロティシズムは詩の中でも遺憾なく発揮されている。彼はエリザベスとの愛の日々をソネットに歌い上げたが、それらは精神的・肉体的なエロティシズムの結晶ともいえる。

短い結婚生活の末、エリザベスが若くして死ぬと、ロゼッティは深刻なデプレッションに見舞われた。異常な精神状態のもとで、それまで書き溜めていたソネットをすべてエリザベスの墓の中に埋めたのだ。

しかしエリザベスの死後数年たった1870年、ロザッティは墓の中からソネット集を掘り出し、それに手を加えて出版した。それが彼の代表的な詩集「命の家」 The House of Life である。ここではこの詩集の中から、彼のエロティシズムが伺われる作品をいくつかを選び出して、日本語に訳してみた。


ダンテ・ガブリエル・ロゼッティのソネット集「命の家」The House of Lifeから Introductory Sonnet(壺齋散人訳)

  ソネットとはある瞬間のモニュメント
  永遠の魂が無限の時間の
  一瞬にささげるメモリアル
  それが輝かしい祝祭にせよ不吉な前触れにせよ
  敬虔の全き姿において
  象牙あるいは黒檀に書きとめよ
  そして時の移りかわりを乗り越えて
  永遠に輝かしめよ

  ソネットはコインのようなもの
  表では魂を表示し 裏側では価値を表示する
  夏の収穫の年貢の代金として
  あるいは嫁入りの際の持参金として用いよ
  でなければ三途の川の波止場で
  シャロンへの渡し賃として支払え


題名にあるとおり、詩集の冒頭を飾る作品。ソネットとは、生きていることからこぼれ出た一瞬のモニュメント、それをつなぎ合わせることで、自分の生きた証が再現されるとする、ロゼッティの考えが盛られている。




INTRODUCTORY SONNET

 A Sonnet is a moment's monument,--
 Memorial from the Soul's eternity
 To one dead deathless hour. Look that it be,
  Whether for lustral rite or dire portent,
 Of its own arduous fulness reverent:
  Carve it in ivory or in ebony,
  As Day or Night may rule; and let Time see
  Its flowering crest impearled and orient.

 A Sonnet is a coin: its face reveals
 The soul,--its converse, to what Power 'tis due:--
  Whether for tribute to the august appeals
  Of Life, or dower in Love's high retinue,
  It serve; or, 'mid the dark wharf's cavernous breath,
  In Charon's palm it pay the toll to Death.



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