English Poetry and Literature
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ハイペリオン Hyperion :ジョン・キーツ


  悲しげな谷間の影深く
  みなぎる朝日を浴びることなく沈み込み
  昼の光も宵の明星の明るい光も届くことなく
  白髪のサターンが岩のように沈黙している
  周囲には静けさが立ちこめ
  頭上には森が雲のように重なり合う
  大気は微動だにせず
  夏の日の生気の風が
  タンポポの羽毛を飛ばすこともない
  枯葉が落ちても動くことなく
  小川が音もなく流れ 死んだように静かなのは
  サターンの尊厳が失われたからだ
  水の精ナイアードが葦の合間から現れ
  その冷たい指を唇に当てた

ハイペリオン(ヒュペリオーン)は、ギリシャ神話に出てくる神で、ゼウスが支配するようになる以前には、太陽を司る神であった。ゼウスは父親のクロノスを始め、タイタン(ティーターン)族に戦いを挑み、ついに長い戦争を勝ち抜いて、新しい宇宙の支配者になるが、この戦いの中で、ハイペリオンも敗れ、太陽の神の座をアポロに譲り渡す。

ジョン・キーツの詩「ハイペリオン」は、タイタン族とハイペリオンの没落と、アポロの勝利を歌ったものである。

キーツはこの詩を1818年に書いた。だが一旦中断し、改めて「ハイペリオンの没落」という題名で書き直した。今日では別の作品とされることが多いが、キーツにとってはあくまでも書き直しであったようだ。

作品としての評価は始めに書いたものの方が高い。未完とはいえ、全体はかなり長い。ここでは冒頭の部分を紹介したい。

サターンはクロノスのことで、タイタン族の主神。オリンポスにおけるゼウスの座に相当する。この冒頭部は、サターンの尊厳が失われたことを暗示することで、これから展開する物語の導入ともなっている。








Hyperion - John Keats

  Deep in the shady sadness of a Vale,
  Far sunken from the healthy breath of Morn,
  Far from the fiery noon, and Eve's one star,
  Sat grey hair'd Saturn quiet as a stone,
  Still as the silence round about his Lair.
  Forest on forest hung above his head,
  Like Cloud on Cloud. No stir of air was there,
  Not so much life as on a summer's day
  Robs not at all the dandelion's fleece:
  But where the dead leaf fell, there did it rest.
  A stream went voiceless by, still deadened more
  By reason of his fallen divinity
  Spreading a shade: the Naiad mid her reeds
  Press'd her cold finger closer to her lips.





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